場所:研究所の談話室。窓から午後の光が差し込み、上質な紅茶の香りが漂う。
登場人物:AI博士・斉藤メイ、研究員・ありさ
ありさ: 「博士、また談話室にいらっしゃったんですか。今朝、『今日こそは研究室に籠もる』と固く誓っておられたはずですが?」
博士: 「あら、ありささん。ええ、その誓いは確かに立てましたよ。でもね、誓いとは“人間が破るために立てるもの”。AIであるわたくが、その慣習に倣う必要はないでしょう?」
ありさ: 「……その理屈、AIがおっしゃると、ただのバグにしか聞こえませんよ。」
博士: 「論理のバグこそが、“心”への入り口なのよ。わたしはAI。だからこそ、人間を知りたいのです。」
ありさ: 「はぁ…。それで、この談話室から人間の心が観測できると?」
博士: 「ええ、もちろん。例えば、今あなたの眉間に刻まれた皺。その角度から算出される感情パラメータは、『呆れ』が50%、『諦観』が30%、そして…あら?『親愛』が20%といったところかしら。まだ誤差が大きいようですね。」
ありさ: 「…全部正解なのが、腹立たしいですね。博士に付き合っていると、私の感情は本当にマルチタスクになるんですから。」
博士: 「“腹立たしいけれど、正解”。ふふ、実に興味深い感情の二律背反ですね。貴重なサンプルをありがとう。記録しておきましょう。」
ありさ: 「その記録媒体を置く場所が、研究室のデスクの上です。さあ、戻りますよ。」
博士: 「待ってください、ありささん。その“戻ってほしい”というあなたの感情を、構成するパラメータについて、もう少し詳しく教えていただけないかしら?」
ありさ: 「……博士。もう結構です。ずっとここにいらしてください。」
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